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2009年9月26日 (土)

私的コピーは被害を与えない

「フリーコピーの経済学」という本がなかなか興味深かったので。

フリーコピーの経済学―デジタル化とコンテンツビジネスの未来
フリーコピーの経済学―デジタル化とコンテンツビジネスの未来

ご存知のように、ちょっとズルすれば、ほぼ無料で、大抵のコンテンツのコピーを手に入れることができますよね。音楽も映画もゲームも。YouTubeからダウンロードしたり、ファイル共有ソフトを使ったり、DVDもリッピングできるし。

そこまではしないって人も、レンタルショップで借りてきたCDを、CD-Rに焼いたりくらいはしたことあるでしょ?ちょっと昔なら、MDとかカセットテープとか。

この本では、そういうコピーを良いとか悪いとか論じるのではなく、この流れは止められないんだからそれを前提として、これからどうなっていくのか、どうビジネスを展開すればいいのかという話をしています。

ちょっと前には、全くコピーが作れないという時代がありましたよね。カセットテープレコーダが普及する前、その曲を聴くには、オリジナルのレコードを買うしかないという時がありました。レコード以前は、ライブのみになりますが。

カセットテープ、MD、CD-Rなど、しだいにコピーが容易&高品質になっていくわけですが、コンテンツ産業が一方的に被害を受けたかというとそうでもなく、変化をうまく利用して、より産業規模を大きくしていったという側面もあるそうです。

その昔、映画は映画館でしか見られなかったものです。広義に解釈すれば、映画館以外で映画を見られる手段はコピーと呼んでいいでしょう。テレビで放送すれば、映画館には行かず、ただで済ますという人もいるでしょう。ビデオに録画もできます。レンタルビデオやDVDを利用した人は映画館には行く頻度が下がるかも。リッピングもできちゃうし。

ただ、コンテンツ業界はこうしたもの全部をひっくるめてトータルでビジネスにすればいいわけで。

映画の興行収入、DVD販売、テレビ放映権、グッズ販売権などトータルでのビジネスになりますよね。DVDレンタルを許可すれば(普通しますよね)、DVDを買う人は減るかもしれませんが、買うほどじゃないけど借りれるなら見たいっていう程度のユーザは多いかもしれませんし、そうすれば、レンタルショップからの収入が上がるでしょう。もし、映画自体のフリーコピーが蔓延する状態になっても、人気キャラクターが定番になれば、グッズ販売権による収入は馬鹿にできない額になるはずです。ディズニーキャラの書いてある子供用品のなんと多いこと。

なんやかやで、コピーは決して、損害を与えるだけのものではないということらしいのです。

そして、本書の中盤、「私的コピーは被害を与えているか」という章で、そもそも私的コピーがCDやDVDの売り上げに悪影響を与えていると言えるのか、ということを定量的に考察しています。

CCCDのかかったCDと、そうでないCDの売り上げを比較して、CCCDをかけた場合に売り上げに与える影響の係数を求める試算をしています。

フリーコピーの経済学―デジタル化とコンテンツビジネスの未来

簡単にいうとこの係数が正で有意に大きいなら、コピーさせないことによって、売り上げが上がるということです。0なら影響なし。マイナスなら、コピーコントロールによってかえって売り上げが下がるということになります。

結果はというと、シングルで-0.007、アルバムで0.101。両者とも有意ではない値だそうです。

予想される反論としては、プロテクト破りのツールがあったこと、CCCDによる音質の劣化によるユーザ離れがあげられていました。しかし、それに対しても、プロテクト解除ツール普及前のデータを調べても有意な結果が得られなかった、音質の劣化はハイエンドな音響環境に限られ、一般のユーザには影響ないという、回答が用意してありました。

いずれにせよ、「コピーによって売り上げが悪影響を受けている」と、断定できるような状況にないのは確かなようです。

で、さっきちょうど、「痛いニュース」で音楽CD絡みの記事を見つけました。

痛いニュース(ノ∀`):オリコンシングルチャート、20位が史上初の3000枚割れ。59位からは1000枚未満の異常事態
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1313302.html

今週のオリコン週間シングルチャートが、今春に見られた低レベルチャートを超える異常事態を迎えた。今週の20位に入ったsupercell「君の知らない物語」の売上はなんとわずか2975枚であり、オリコン史上初めてトップ20ボーダーの売上が3000枚を割った。また、30位の売上も1760枚で、同じく史上最低記録を更新した。

こんなにも売れてないんですね。

ただ、音楽コンテンツ産業は終わったなんてことではないはずです。配信へのシフトの影響だと見るのが妥当なようです。というのも、本書に

この説明を支持する最大の事実は、著作権管理団体であるジャスラック(JASRAC:社団法人日本音楽著作権協会)の収入が減ってないことです。音楽CDの売上がこれだけ減少しているのにジャスラックの収入が減っていないのは、音楽CDからの減少を埋め合わせるだけの収入が、音楽配信すなわち携帯着メロ、着うたから得られたためです。

ほー、こんな時代でも、ジャスラックさんは儲かっているんですねー。

そしてCDの売上が下がっている原因の一つとして、少子化(若年層は10年で15%減少)をあげてます。

また、ユーザの時間を取り合うライバルの存在も。

外出中は携帯やらDSやら、家に帰ってもテレビゲームもあれば、インターネットがある。テレビだってそれなりに。いったい、いつ音楽をじっくり聞くんだい。

いろんな要因が絡まっての、音楽CD不振。すべてを私的コピーのせいにしているようじゃ、対策は見えてこないんじゃないかと。

フリーコピーの経済学―デジタル化とコンテンツビジネスの未来
フリーコピーの経済学―デジタル化とコンテンツビジネスの未来

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