「誰かが嘘をついている」の、いろいろ消化不良の点
水谷豊が主人公のドラマ「誰かが嘘をついている」見ました?
見ている途中に書いたエントリは以下。
「誰かが嘘をついている」と「それでもボクはやってない」の類似性
ここからはネタばれもあるので、録画したやつをまだ見ていないという人は、気をつけてくださいね。
一審で有罪判決が出て、途方に暮れる主人公たちだったのですが、なんと、犯行現場を盗撮していたビデオが見つかったんです。同じ車両に同乗していた、痴漢真犯人とは別の犯罪者が捕まって、押収されたビデオに犯行現場が映っていたんです。
VTR中の真犯人の服の袖の色と、逮捕時に主人公が来ていた服の色が明らかに違うという点が有力な証拠となり、主人公に晴れて無罪判決が下るという流れ。なんと奇跡的。
・・・どうですか?
ちょっとキビしくないですか、この展開。どんだけ都合がいいんだよ。電車の中は犯罪者だらけかいな。痴漢をする人、される人、そのまた現場を映す人。いやー、「箱根山、駕籠に乗る人、担ぐ人、そのまた草鞋を作る人」ってフレーズを思い出しました。全然、意味違うけど。
ただこれは、そんな普通に考えればあり得ないような奇跡でも起きないかぎり、痴漢冤罪の容疑は晴れないんだぞという、制作者側の最大限の皮肉かもしれません。
そして、晴れて無罪判決が出た後の法廷、裁判官も傍聴者もいなくなった法廷で、主人公、家族、弁護士たちが喜びを噛みしめている場面で、こんなことが、
法廷の椅子に座っていた被害者の女子高生がこう叫びます。
「じゃあ一体誰がやったっていうのよ!」
えー!!逆切れ?まずは謝りなさいよ。目の前にいるおっさんは、濡れ衣着せられて、会社クビになって、とんでもないひどい目にあったんですよ。
「じゃあ一体誰がやったっていうのよ!」
「知らんがなっ!」
あと、この被害者の女子高生がその場にいるのも変じゃないですか?被害者と元容疑者だけが法廷に残っているなんて、どう考えてもトラブルのもとですよね。長い期間この勘違い女のせいで、家族がどれだけひどい目に・・・って、詰め寄ったりしそうになりそう。
このシーンを入れた理由については、監督が語っているように、
痴漢冤罪、人間性描く ドラマ「誰かが嘘をついている」:イザ!
宮本理江子監督は「疑いをかけられた男性はもちろん、その家族や、真犯人が分からず思いが晴れない女性被害者の側も丁寧に描いた」と語る。
被害者女性の、やり場のない怒りを表現するためのものだとは思うのです。う~ん、根拠に乏しい理由で、犯人探しをしたんですから。その報いだって受けるべきかとも思うんですが。
あと、ちょっと気になったのが、「誰かが嘘をついている」というタイトル。何か黒幕的なものが登場するのか?検察は無罪であることを知りながら裁判を続けるのか?この女子高生は何か悪意があって嘘をついているのか?みたいなことがあるのかと思ってたんですが、そうでもなかったですね。
女子高生も単純な勘違いでした。「痴漢しただろ」っていう恐喝事件が、過去に実際にありましたが、そんなんじゃなかったです。
痴漢捜査、痴漢裁判の理不尽さについては、「それでもボクはやってない」ですでに描かれていたので、ドラマにはさらなる展開を期待していました。
例えば・・・、
【冤罪を引き起こした女子高生のその後】
実際の話で、刑事裁判での無罪判決後、逆に元容疑者が民事で訴え返したってのがありましたよね。
【主人公のその後】
無罪判決が出たからと言って、会社に戻れるわけもなく、その後も苦労を強いられる話とか。
【真犯人の心理】
うまく逃げた真犯人は、どんな心境だったのか。痴漢事件はそれほど大きくは報じられなさそうだから、こんなこと(裁判)になっているとは真犯人は知らないのかもしれませんが。殺人など重大事件での冤罪で、このテーマを扱うと面白いかもしれません。
【証拠があるのに覆らない判決】
痴漢現場の証拠VTRが出てきたときに、「もしや、こんな有力な証拠があるのに、裁判官は無視し、理不尽な判決になる」みたいな、ものすごい展開になるのでは、と期待したのですが、そんな無茶苦茶なことはなかったです。
でも、そんな無茶苦茶なことも実際には起きているんですよ。「裁判って公正に行われるもんでしょ」っていう希望的な常識は、しばしば打ち砕かれるのです。
やはり冤罪では? 高知白バイ事故: 主張
というわけで、なんやかや文句も書きましたが、見ていて面白いドラマだったし、痴漢冤罪の理不尽さを伝える意味でも、意義深いものだと思いました。
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