過剰修正 敷く(ひく)、紫蘇(ひそ)、潮干狩り(ひおしがり)?
↓この本を読みました。
そして、そのあと↓この本を読みました。
すると、普段だと見逃すような面白い点に気付きました。
まずは、浮浪雲の方から、これ↓
P167 夢屋の番頭の欲次郎さんが、ちょっと字余りの都都逸(?)を唄っています。
いも食って死んだは おいらの親父だなれと
おならしるたび思い出す・・・と。
「おなら(を)しる」 は、正しくは「ひる(放る)」で、江戸弁の訛りですよね。「ひ」が「し」になっちゃう。これはよく見たり聞いたりします。
で、もひとつ、この場面↓
P153 浮浪(はぐれ)の奥さんのおカメさんが、これまた都都逸を唄っています。
しわがあれども あの梅干しは
色気離れぬ 粋なやつ。
あたしゃ 青梅ゆり落とされて
ひそになじんで 紅くなる
こっちでは「しそ(紫蘇)」が「ひそ」になっちゃっています。こんな逆のパターンがあるの?
って不思議に思ったのですが、冒頭にあげた「言語学入門」には、この現象についての説明がありました↓
P164 2.1.10 過剰修正 hypercorrection (誤った回帰 false regression)
正しくないと思われている形を正しい形にしようとして正しいものまで変えてしまうことがある。それを過剰修正もしくは誤った回帰という。
ヒをシと発音する日本語の方言で「オシサマ」は間違いで「オヒサマ」が正しいといった意識が働くと、本来シであるものまでヒにしてしまい、「シク(敷く)」を「ヒク」と言ってしまう、などがそれである。
ロンドンのコックニーと呼ばれる英語ではhundredをundredのようにhを落として発音する。そこでhが付いているのが正しいという意識が生まれてundredをhundredに直すだけでなく、本来hを持たない語であるeggまでheggと言うようになってしまうという現象がある。
おお、まさにこれではないか。「ヒ」が「シ」になってしまうだけでなく、「ヒ」と「シ」がごっちゃになっているのは、たぶんこのへんが理由なのね。
そういえば、アニメ「サザエさん」で、タラちゃんが「潮干狩り」をうまくいえなくて、「ヒオシガリ」と言って、みんなに笑われるみたいなエピソードがあったのですが、それからしばらく後に、「笑点」を見ていたとき、桂歌丸さんがナチュラルに「ヒオシガリ」って言っていて、「おおリアルタラオだー」って驚いたのを、思い出しました。
過剰修正というよりは、子供と老人は近い、の好例でした。
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