筒井康隆『大いなる助走』直廾賞選考委員のモデル
この小説↓には、
実際の直木賞の選考委員である作家をモデルにしたと言われている登場人物が出てきまして、誰が誰なのか気になっておりました。
で、検索していると、↓こんなものを見つけました。
335 :名無しは無慈悲な夜の女王:2008/05/10(土) 05:04:47
筒井康隆『大いなる助走』直廾賞選考委員 モデル定説
膳上線引……松本清張
雑上掛三次……村上元三
坂氏肥労太……源氏鶏太
鰊口冗太郎……川口松太郎
明日滝毒作……瀧井孝作
海牛綿大艦……海音寺潮五郎
まあ、あくまでフィクションであって、その人のことずばりを書いているというわけではないので、勘違いなさらぬよう。
私は、松本清張氏以外は知らないので、正直よく分かりません。そういう人のために、ウィキペディアへのリンクをはっておきました。皆さんすでに亡くなっていますね。
では、それぞれの人物が作中で登場する場面を引用。
自称「直廾賞世話人」の多聞伝伍が、直廾賞候補の主人公 市谷へ戦略を説明する場面(ACT 4 / SCENE 1)から。
【膳上線引】
推理小説や風俗小説を書いている膳上線引。菊石君(引用者注:別の直廾賞世話人である評論家。他の候補を推している)はこの人が苦労していた時代のことを知り過ぎていて、だから今でもこの人からは嫌われている筈です。したがってこちらに有利です。いやまあこの人は自分の昔のことを知っている人に会うと実になんともいやな顔をする。
この後の場面で、市谷は膳上邸を訪れ、膳上が二階の窓から原稿をばらまき、編集者に拾わせる場面や、執筆しながら放尿し、天井からしたたってくる場面などがある。市谷からは100万円受け取る。
【雑上掛三次】
さて、その次は時代小説の雑上掛三次。この人は男色家です。うまい具合にあなたのようなタイプが好みです
「あなた」とは、直廾賞候補になった主人公の市谷で、その後、市谷はお尻の貞操を失うことになります。
【坂氏肥労太】
次は風俗小説の坂氏肥労太。この人は女狂いです。いい歳をしていまだに陰唇をきわめている。しかも若いしろうとの女性が好きときているのでわれわれはいつも困る。
市谷は結局、愛人 時岡玉枝を提供することになります。
【鰊口冗太郎】
まず鰊口冗太郎。この人はやめた方がよろしい。この人の娘というのがあの鰊口早厭というタレントで、離婚歴があり子供がいておまけにラリパッパ。始終交通事故などを起こすものだから鰊口さんも手を焼いています。未婚の男性が直廾賞をとると必ず娘を押しつけようとするので有名ですが、あなたあの鰊口早厭と結婚する気がありますか。
【明日滝毒作】
明日滝毒作。この人も政府関係の仕事の方で金が要る筈です。
[2016年4月3日追記開始]
明日滝毒作のモデルは今日出海ではないかというコメントをもらいました。詳細はコメント欄で。
[追記終了]
【海牛綿大艦】
次は歴史小説の海牛綿大艦。この人はいつも文壇長者番付に顔を出していますが高価な古書を買いこみすぎて困っていますから、現金は受け取る筈です。
フィクションだから何でも書ける。現実を想像させるようないくつかの要素を混ぜ込みつつ、虚構の世界で、批判したり、茶化したり、小馬鹿にしたり・・・。小説家の特権ですねえ。
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明日滝毒作は滝井孝作ではなく今日出海だと思いますよ。
投稿: | 2016年3月29日 (火) 23時26分
「滝(瀧)」と「作」と名前の類似度から、明日滝毒作は瀧井孝作ではないかと、2ちゃんねるの書き込み主は推理したのでしょう。
でも、小説の「この人も政府関係の仕事の方で金が要る筈です」に一致するようなプロフィールは瀧井孝作にはなさそうですね。
ご指摘の今日出海だと、ウィキペディアに「初代文化庁長官を務めた」とあって、一致しますね。(ご存知ない方のために補足しますと、今 日出海 こん ひでみ という読み方です)
さらに、↓これは映画版の書き起こしのようですが、
「文学賞殺人事件 大いなる助走」 1989年 東映
http://www.asahi-net.or.jp/~AN4S-OKD/okyda/eiga/028030.htm
「それから明日滝毒作。アル中のぼけ老人だが、選考委員であることに変わりはない。この人も文化庁関係の仕事をしているので、金がいるはずです。」
のような台詞になっています。映画では「文化庁関係の仕事」とさらに突っ込んだ表現になっています。これを見ると、今日出海説の方が有力だと言えそうですね。
字面的には、*今日*出海と*明日*滝毒作がかかっているのでしょうか。
投稿: 管理人 | 2016年4月 3日 (日) 07時15分