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2012年10月20日 (土)

「あたまにかきのき」と「頭山」と「堀池の僧正」

子供がこんな本↓を借りてきました。

あたまにかきのき (むかしむかしばなし)
あたまにかきのき (むかしむかしばなし)

ストーリーを書き出してみると、

(1)主人公の「あんにゃ」が柿の木の下で寝ている
(2)頭の上に柿の実が落ちてくる
(3)頭から芽が出て大木になり柿の実が成る
(4)大量に成ったものが売れて大繁盛
(5)柿売り達が怒り、切ってしまう
(6)切り株になめこが生える
(7)なめこ狩りが大繁盛
(8)なめこ売り達が怒り、抜いてしまう
(9)抜いた跡に水がたまり、池になる
(10)池に鯉が育ち、鯉の生簀で大繁盛
(11)魚売り達が怒り、土で埋めてしまう
(12)あんにゃは自分の頭の上に「どんでんして のっかっ」て
(13)そこを耕して田んぼを作って幸せに暮らした

これって、落語の「頭山」に似てませんか?

頭山の筋を書くと

(A)さくらんぼを種ごと食べる
(B)芽が出て、桜の木になる
(C)花見で大盛況
(D)うるさくてかなわないので、本人が抜く
(E)抜いたあとが池になり、魚がふえる
(F)釣り人や舟遊びで大盛況
(G)うるさくて、嫌気がさす
(H)自分で自分の頭の上の池に身投げする

頭から木が生える、抜いたあとが池になる、あたりが酷似していますよね。あとは、(12)と(H)に見られる、現実離れした展開。

落語ならではの「イリュージョン (c)立川談志」ですね。頭の上で大勢の人が花見しているとか、自分の頭の上の池に飛び込むとか、スケールや包含関係が破綻しているのに、落語の語りなら、すーっと入ってきてしまう不思議。

『あたまにかきのき』の絵本では、こんな感じでビジュアライズされていました。

絵本『あたまにかきのき』ので、自分の頭に飛び込む場面が、落語「あたま山」に類似している

状況をイメージしやすい絵だとは思うのですが、あんにゃを2人描いてしまうと、微妙に違うような気も。絵にするのは難しいですね。

「頭山」に関しては、ちょっとしたエピソードがありまして、外国人の女性(たしかイスラエル人だった)と話した時に、彼女が「日本のお話を知っている」といって、頭から木が生える話をしたんですね。

で、「子供の頃に聞いたので、話の最後がどうなるかは覚えていない」と。

なので、私が最後は身投げするってことで「commit suicide」するって話したら、「それはちょっと・・・」って感じで引いちゃって。

たしかに、"commit suicide"では伝わらないよなあ、って思った記憶がありますね。

そんなに重いニュアンスではないんですよねえ。

手元に桂枝雀の口演の録音があるんですが、サゲは↓こんな感じ

桂枝雀: 「よし、いっそのこと」と、この男ね、頭の池へドボーン!と身ぃ投げて、死んでしまっちゃったとさ~♪

お客さんも、アハハハって感じで。重たさは一切なしですね。人が死んでいるんですけどね。この噺自体、リアリティからはほど遠いものですからね。

「たがや」という落語も、悪役とはいえ、はねられた首(=頭)が空に高く上がるのを見て、「たがや~」(花火の玉屋とかかっている)ですからね。

この手のブラックさが許されるのが落語なんでしょう。

で、この「頭山」(上方では「さくらんぼ」)ですが、

徒然草の『堀池の僧正』が元ネタである、という説がある。
(頭山 - Wikipediaより)

とのこと。

堀池の僧正は高校の頃に古典で習った覚えがあります。

↓こちらに、原文と現代語訳があります。

徒然草 第四十五段 - 徒然草 (吉田兼好著・吾妻利秋訳)

藤原公世、従二位の兄さんで良覚僧正とか言った人は、大変へそ曲がりだったそうだ。

彼の寺には大きな榎の木があったので、近所の人は「榎木の僧正」と呼んでいた。僧正は、「変なあだ名を付けやがって、ふざけるな」と怒って、その榎の木を伐採した。そして、切り株が残ったので「きりくいの僧正」とあだ名を付けられた。すると僧正はますます逆上して、今度は切り株までも掘り起こした。そして大きな堀ができた。その後、僧正は「堀池の僧正」になった。

木を切ったあと、切り株を掘り起こして、それが池になったというところしか共通点はないですが、着想の元になった可能性はありそうですね。

高校生の時は何が面白いのかちっとも分からなかったのですが、今あらためて読んでみると、じんわりと面白い。

人からどう思われたいとか、どう呼ばれたいとか、気にしたところで、周りの人は、そんなのは意に介さないという。大人物扱いなんかしてくれないという、悲哀もあるような気がします。

話を「あたまにかきのき」に戻して、

絵本がいくつか出ているのですが、内容が微妙に違うとのこと。

『あたまにかきのき』という昔話、本来はどんな話なのですか? - Yahoo!知恵袋

質問者は3つの書籍のあらすじを書いています。私が読んだのは(1)で、望月新三郎 著のものでした。(2)は田んぼを耕したのが本人ではなく小作人になっていたり、(3)は田んぼは頭じゃないところにあって、田んぼの水のみ頭の池から汲み出したという話らしいです。

この3つはどれも柿の木ですが、アマゾンの「商品の説明」の項目(たぶん著者のコメント)によると、

頭やおなかに芽を出す木は、みかんやさくらんぼなど、いろいろです。私は、東北地方に伝わる柿の木を選びました。土に生きる農民の気持ちで私なりに語り、文章を刈り込み、読んで楽しい、頭に柿の木にいたしました。

と、柿だけでなく、みかんやさくらんぼなどのバージョンの昔話もあるみたいで、興味深いです。

あたまにかきのき (むかしむかしばなし)
あたまにかきのき (むかしむかしばなし)

あたまにかきの木 (日本の民話えほん)
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あたまにかきのき (チューリップえほんシリーズ)
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落語 八代目 林家正蔵 セレクト
<COLEZO!TWIN>落語 八代目 林家正蔵 セレクト

新訂 徒然草 (岩波文庫)
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