ドガ作『エトワール、または舞台の踊り子』は怖い絵?
絵画って漫然と眺めてるだけじゃ、全然理解できていないんだなあ、と実感させてくれた本↓
いかにも怖いぞ、な感じの絵も載ってますが、どこが怖いの?的なものの方が興味を惹かれます。
例えば、ドガ『エトワール、または舞台の踊り子』。画像はウィキメディアコモンズ(パブリックドメイン)より入手。
この絵、見たことあります。美術の教科書か、展覧会の広告か何かかなあ、絵面は明らかに見覚えがある。
で、私としては、「バレリーナが華やかに踊っている図」くらいの印象。
背景を知らないと、それで終わっちゃう。
当時のオペラ座は芸術というよりは社交の場。桟敷席は富裕層が使う個室スペースといった感じだったとのこと。
飲食も自由だったし、カーテンを閉じればそこで何をしようとかまわなかった。またこれら高額の桟敷席を持つ客は、上演中であっても自由に楽屋や舞台袖に出入りする権利を持っていた。
お金持ちが好き勝手にやっていい場だったみたいですね。
となれば、容易に想像がつくことだが、「オペラ座は上流階級の男たちのための娼館」(当時の批評家の言葉)となる。
今と全然違いますね。なので、バレエやオペラ座についての現代のイメージでこの絵を見てしまうと、何も分からないという状況になってしまう。
つまり、このエトワール(フランス語で「スター」の意。プリマ・バレリーナのこと)は、ただ華やかに踊っているだけでなく、
少しでもいい暮らしをしたい、わずかでも這い上がりたいと必至の彼女たちにとっては、バレエ芸術の真髄を極めるも何も、まずは良いパトロンを掴まえるのが先だった。
という、側面があったとのこと。
深読みしすぎ・・・?
いえいえ、絵にはちゃんと描かれているんですよ。
おお、こんな隠れキャラが!
著者の中野京子さんによると、エトワールの首に巻かれたリボンの黒と、男性のスーツの黒との一致も、金で縛られている暗喩なのではないかと。
ね、なんだか、ちょっと恐い絵でしょ。
これからは、絵をもっとしっかり見ようと思います。
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