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2012年12月22日 (土)

NHKで番組化してほしい、ファラデーの『ロウソクの科学』

『ロウソクの科学』は、科学者のファラデー(1791-1867)が子供向けに行ったクリスマス講演を講義録としてまとめたものです。

ロウソクの科学 (岩波文庫)

子供向けなので、黒板に化学式を書いて説明するようなものでは、もちろんなく、たくさんの実験を見せながら講演を進めるようなスタイルです。

読んで分かりやすいか?と聞かれれば、分かりにくいと答えますね。だって、実験を見せながらという前提での講演ですからね。それを、文章に書き起こしたものを読むのは、図が補足されているとはいえ、それなりに(実験を理解する)読解力が必要になります。

もし、あなたが科学の勉強をしたいというなら、この本はお勧めしません。中学校か高校の教科書を読んだ方がよっぽど分かりやすいでしょう。

この本の価値はそこにあるんじゃないんですよね。

訳者の竹内敬人氏が、「前書き代えて」という章に、↓こう書いています。

 しかし、私がやや丁寧に訳注をつけたのは、単にギャップを埋めるためだけではない。もう一つの狙い、もう一つの願いのためである。それは本書の読者に一八六〇年にタイムスリップしてほしいという願いである。当時の少年少女、当時の読者の目線で、感覚で、本書を読んでいただきたい。そうすれば、おそらく歴史を通じて、少なくとも自然科学の分野ではもっとも優れた講演者であったファラデーの講演の意義を真底から理解でき、またそのすぼらしさを心から楽しめるのではなかろうか。

「タイムスリップ」という言葉が、よく言い表していると思います。

科学的な事物を学習したいだけなら、進歩した現代の教材の方が、もちろん分かりやすいでしょう。

でも本書を読む事によって、当時の科学のレベル、クリスマス講演の雰囲気、ファラデーが講演している様子、その前には目を輝かせている少年少女たち、そういうものを思い浮かべることができるんですよね。

だから私は、この本は中高生よりもむしろ大人に、ある程度科学のリテラシーのある大人に、勧めたいんですよね。

塩酸に亜鉛を入れて、出てくる気体は何か、軽いのか重いのか、火をつけたらどうなるか、燃えた後に残る物質は何か、そんなことは説明されなくても百も承知という人に勧めたい。

上記の現象を知らない人が、この本を読んで、これを学ぼうとするのはあまり効率が良くないと考えます。そういう場合にはやっぱり教科書や、教育テレビの番組を勧めますね。

ただ、もし、このファラデーの講演を映像化すれば、歴史ドラマ、エンターテインメントショー、そして科学教材の要素も併せ持った、面白いコンテンツができると思うんですよ。

見た目の部分は当時を完全に再現してほしいですね。ファラデー役の人には当時の服を着せて。観客の子供たちも同様に。実験器具も可能な限り当時風で。

19世紀のヨーロッパの雰囲気、ファラデーの語り口調を再現しながら、数々の科学実験を見せていく。

「ロウソクの科学」を丁寧に映像化すれば、きっと価値ある映像コンテンツになると思います。

NHKさん、やってくれないですかね。エミー賞とか狙えそうな気がするんですけど、どうでしょう。■

[2012年12月24日追記]
どんな実験を行っているか、図面などの紹介↓
19世紀の科学のレベルが思いのほか高かった ファラデー『ロウソクの科学』: 主張

ロウソクの科学 (岩波文庫)
ロウソクの科学 (岩波文庫)

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