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2013年3月10日 (日)

新型出生前診断で陽性だった→ダウン症である確率は?

↓新型出生前診断に関する産経新聞の記事です。

陽性だとどうなる? 課題は? 現状は? 新型出生前診断Q&A:イザ!

この中に、↓下記のような記述があったのですが、

陽性だった場合の的中率は80~95%程度、陰性の的中率は99%以上。

この表現は語弊があると思いました。

上記の記載だと、

  検査で陽性と出た→ダウン症である確率は80%~95%

と読めてしまいます。

というか、そのように意図して書いたんでしょう。

でも、本当か?

この書き方って、事前確率を一切考慮していませんよね。元々リスクの低い20代の妊婦のケースと、元々リスクの高い35歳以上のケースとの違いなどに全く触れていないところに問題があると思います。

検査結果をどう受け取るかについては、下記に非常に分かりやすい例が載っていました。

株式会社Cell and Genetic Laboratory(セル・アンド・ジェネティック・ラボラトリー)新型出生前診断サイト

結論部分を先に引用すると、(陽性に関する部分のみを抜粋)

【例:20代の場合、21トリソミーについて】
20代の方の場合、21トリソミーのリスクが低いため、陽性反応が出た方の50%程度が実際に陽性と考えられます。
  →陽性的中率:50%程度

【例:35歳以上の方の場合、21トリソミーについて】
35歳以上の方の場合、21トリソミーのリスクが20代と比較して高くなるため、陽性反応が出た方の80%~95%程度が実際に陽性と考えられます。
  →陽性的中率:80~95%程度

数値の一致から、冒頭の産経新聞の記事は、この35歳以上のケースのみのことを書いたように思えます。

なぜ、年齢(そもそものリスク)の違いによって、こんなにも差が出るのかというのは、具体例で考えてみると、分かりやすいです。

検査の精度は、「感度」と「特異度」という数値で表現されていることが多く、シーケノム社の検査『MaterniT21 plus』の場合、

検査精度
  ・21トリソミー   感度 : 99.1%   特異度: 99.9%

となっています。

これは、下記のような意味になります。

ダウン症である胎児が検査を受けると
  → 99.1%は陽性という結果が出る
  →  0.9%は陰性という結果が出る

ダウン症でない胎児が検査を受けると
  →  0.1%は陽性という結果が出る
  → 99.9%は陰性という結果が出る

上記の数値、「感度 : 99.1%」「特異度: 99.9%」は非常に高い精度を表しているように思えますが、これに具体例を当てはめると、けっこう意外な数字が出てくるケースがあります。

例えば、20代の出産の場合は、高齢出産に比べダウン症のリスクはとても低く、割合は1000人に1人程度です。

今、20代の100万人の妊婦がいたとすると、下記のような内訳になります。

  ダウン症でない: 999,000 人
  ダウン症である:   1,000 人

全員が検査を受けたとき、検査で陽性が出るのは下記の2ケース。

  ダウン症でないのに、陽性と出る人数
    999,000 × 0.1% → 999人

  ダウン症であって、陽性と出る人数
    1,000 × 99.1% → 991人

つまり、陽性という検査結果が出た時に、実際にダウン症である割合は、

  991 / (999+991) = 約49.8%

という、かなり低い陽性的中率になってしまうことになります。

この数字は、前述のセル・アンド・ジェネティック・ラボラトリーのサイトにあった、「50%程度が実際に陽性と考えられます」という記述とも一致しますよね。

結局、医学的検査の陽性的中率や陰性的中率は、事前確率に大きな影響を受けるので、検査を受けた人のもろもろの要因(年齢とか、親族に同じ病気の人がいるか、など)を抜きにして、

陽性だった場合の的中率は80~95%程度、陰性の的中率は99%以上。

などと、言ってしまうのはかなり問題だと思うんですよね。

ちなみに、この感度と特異度が分かっている検査で陽性(or陰性)が出た時に、実際に陽性or(陰性)である確率は?みたいな問題は、統計の入門書なんかではよく出てくる例題で、これを理解すれば、いろいろなケースに当てはめて、確率を見積もることができます。

私は↓これで理解しました。(6章 ベイズ統計のトカゲインフルエンザのとこ)

Head Firstデータ解析 ―頭とからだで覚えるデータ解析の基本
Head Firstデータ解析 ―頭とからだで覚えるデータ解析の基本

以前書いた記事↓

オライリーの「Head First」シリーズが面白い: 主張

このHead Firstシリーズは、独特な雰囲気がある本で、気に入る人は、すごく気に入ると思います(そして、気にいらない人は、すごく気に入らないと思う)。

最後にデータ解析とか統計の勉強しろとか、何それ? と言われてしまいそうですが、任意の検査をわざわざ受けて、その精度がどうとか、結果がどうとか、それで何らかのアクションをとるとか、そういうことを考えているんだったら、最低限の知識は身に付けておかないと、いけないんじゃないかという気がするんですが、どうでしょう。

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