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2014年4月19日 (土)

中頓別町 → 上十二滝町 と変更(村上春樹「ドライブ・マイ・カー」)

中頓別の宮崎泰宗 町議会議員、やっちまたなあって感じですね。という話は後ほど。

「ドライブ・マイ・カー」が雑誌 文藝春秋(2013年12月号)に掲載されたときに「中頓別町」という表現だった箇所が、昨日(2014年4月18日)発売された単行本『女のいない男たち』の中では、

村上春樹さんの新短編集発売 抗議受けた町名は変更:朝日新聞デジタル

月刊誌「文芸春秋」(昨年12月号)で発表した短編「ドライブ・マイ・カー」では、北海道中頓別町出身の女性が車窓から火のついたたばこを外に投げ捨て、主人公が「たぶん中頓別町ではみんなが普通にやっていることなのだろう」と思う場面に対し、町側が「誤解を招く」として抗議していた。単行本では、架空の町「北海道**郡上十二滝(かみじゅうにたき)町」に変更されていた。

中頓別の皆さん、嬉しいですか?

という答えは、次の選挙で宮崎泰宗氏が当選するかどうかで判明するんでしょうね。

単行本で町名が変更される予定であることは2月の時点で分かっていて、宮崎町議はブログの中で、

TEAM中頓別~今そして未来の青空へ~ 『御礼』

実際はポイ捨て等、作品中のような行いを普通にするような町ではないと、作家ご自身にご理解をいただいたことで十分です。

と満足している様子ですが、やっぱりちょっと変だよなあ。

「村上春樹は中頓別町のことを『ポイ捨て等、作品中のような行いを普通にするような町』だと考えていた」と、宮崎町議は考えていたの? 「作家ご自身にご理解をいただいた」ということは、そういうことですよねえ。

「たぷん中頓別町ではみんなが普通にやっていることなのだろう」と考えたのは、村上春樹じゃなくて、家福(小説の主人公)ですから。

宮崎町議は「小説」というのが何なのか、あまりご存知ないようで・・・

町議の別のブログ記事です↓

TEAM中頓別~今そして未来の青空へ~ かわら版のあとがきについて

 文藝春秋 平成25年12月号335ページより 「北海道の山の中で育ちました。十代の初めから車を運転しています。車がなければ生活できないようなところです。一年の半分近く道路は凍結しています。運転の腕はいやでも良くなります。」
 とありますが、車がなくても生活できますし、私は自分の運転が上手いと思ったことは一度もありません。半年近くも道路が凍結するところが日本にあるのか疑問です。

だからそれは、事実でも、村上氏の考えでもなく、みさき(登場人物)の発言なんだって。

「北海道の山の中で育ちました。雪は降ったことないし、冬でも30℃くらいです」って発言があったとしたら、「それは事実とは違う!」と騒ぐんじゃなくて、「その登場人物は高田純次みたいなキャラなのかな」って読むのが小説でしょ。

私の解釈(妄想)では、みさきは運転の腕の良さに言及されると、いつもこんな感じで答えていたんじゃないかなと。運転なんて、センスと性格だとは思うけど、そんな説明の仕方ってめんどくさいじゃないですか。特にみさきがそんな返答をするとは思えない。で、外部的な要因をあげれば、相手もそれで納得するし、そんな話を続ける必要もなくなるし。

同340ページより 本籍地は北海道中頓別町、二十四歳になったばかりだった。中頓別町というのが北海道のどのへんにあるのか、家福には見当もつかない。
 とありますが、見当もつかないのに、なぜ実名を使用されたのでしょうか?町名が意味なく何度も使われていることにも強い違和感を覚えます。

この箇所を読み直して、むしろ腑に落ちました。

「北海道のどのへんにあるのか」「見当もつかない」ような家福だから、「たぶん中頓別町ではみんなが普通にやっていることなのだろう」っていう、ちょっと極端なイメージを持ったんだなあという。

中頓別町が出てくる箇所は、上記のみさきの本籍の箇所、煙草を捨てたシーン以外にもう一箇所あって、↓こんな感じです。

村上春樹「ドライブ・マイ・カー」より

小説全体を読むと、みさきは魅力的な人物として描かれていると感じました。

容姿に関しては、↓こんな感じなんですが、

彼女はおそらくどのような見地から見ても美人とは言えなかったし、大場が言ったようにひどく素っ気ない顔をしていた。頬にはにきびのあとが少し残っていた。目は大きく、瞳がくっきりしているが、それはどことなく疑り深そうな色を浮かべていた。

それでも、饒舌でない家福が、

自分の娘くらいの年の女を相手に、どうしてこんな話をしているのだろう

みたいになってしまうのは、みさきの不思議な魅力ゆえだったりします。

余計なおしゃべりはしない。家福が集中しているときには存在を感じさせない。言葉数は少ないけど、真実をつくような発言をするもんだから、家福もいろいろ話してしまう。

そんな魅力をもつ登場人物の出身地は・・・そうだ、何度も行った事があり、大好きなあの町、中頓別にしよう。そんな感じじゃなかったのかなあ、なんて。

でも、「町にとって屈辱的な内容。見過ごせない」と町議は受け取った。

気持ちは伝わらなかった・・・。村上さんは悲しかったんじゃないかなあ。■

[2014年8月23日追記]
「ドライブ・マイ・カー」だけでなく、「イエスタデイ」の方にも横槍が入っていました↓
村上春樹『ドライブ・マイ・カー』『イエスタデイ』の単行本での変更内容: 主張

[2016年2月8日追記]
  中頓別の皆さん、嬉しいですか?
  という答えは、次の選挙で宮崎泰宗氏が
  当選するかどうかで判明するんでしょうね。

と書きましたが、その後の選挙結果が判明しました↓(だいぶ前の話だけど)
村上春樹に質問状を送った中頓別町の宮崎泰宗町議が再選されていた: 主張

女のいない男たち
女のいない男たち

文藝春秋 2013年 12月号 [雑誌]
文藝春秋 2013年 12月号 [雑誌]

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コメント

当選しましたね!しかも一期目に続き二期連続のダントツトップ!作家もあなたもあまり田舎なめないほうがいいですよ(^^)/

コメントありがとうございます。こういうのって自分で書いたくせに、すっかり忘れてたりしますから。

私は別に田舎をなめていたわけではなく、有名な作家の小説に「中頓別町」というのが残るのは、そんなに悪いことではないんじゃない?程度の気持ちです。ただ、観光で成り立っているような町でないなら、住民の方的にはどうでもいいのかもしれません。

「次の選挙で宮崎泰宗氏が当選するかどうかで判明するんでしょうね。」なんて書いておいてなんですが、今回の地名改めさせ騒動だけで、投票を決定するわけでもないですしね。文学を解さないけれど、すばらしい政治家というのはいるでしょうし。

あと、「ダントツ」は「断然トップ」の略なので、「ダントツトップ」という表現はおかしいですよ、なんてのは「ら抜き言葉」を指摘するぐらい無粋なことだとは理解しつつ、それをおいといたとしても、

中頓別町選挙結果 | 中頓別町
http://www.town.nakatombetsu.hokkaido.jp/docs/2015042700014/

宮崎 泰宗 (無所属) 252
西浦 岩雄 (無所属) 224
細谷 久雄 (無所属) 200
長谷川 克弘 (無所属) 196
・・・

↑こういう感じの得票のときは、「ダントツ」という表現はちょっと適さないのではないかと。っていうか、この選挙って去年(2015年)4月じゃないですか。10ヶ月も気付きませんでした。教えてくれてありがとうございます。また、ブログのネタができました。

ところで、文面から、あなたは中頓別の若い方だとお見受けしましたが、小説から中頓別町の記述を削除させた町議の行動って、プラスだったと思いますか?

>宮崎町議は「小説」というのが何なのか、あまり御存知ないようで・・・

読者がブログ主氏のように意識高い方ばかりなら、そういうことでいいのでしょうが、膨大な数に上る村上氏の読者はそういう人ばかりではありませんからね、まあ心配する気持もわからないでもない。

まがりなりにも村上氏の作品を読むような文学を愛するお人なら、その程度のことは理解しているでしょう。

・・・と言いたいところですが、太宰治の私小説を読んで、太宰自身のありのままがそこに書かれていると思い込んでしまったり、司馬遼太郎の歴史小説を読んで、歴史上の人物の性格がそうであったと信じ込んでしまうようなことは、(私も含めて)ありがちなことですからねえ。

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