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2015年4月

2015年4月30日 (木)

「夢の扉」の構成が逆に女性差別ぽかった件

何かこう、しっくりこなかったという話。

2015年3月1日放送のTBS「夢の扉」、内容は↓こんな感じ。

2015年3月1日:放送内容|TBSテレビ:夢の扉+

一人は、日本屈指の女性工学博士、大島まり。脳動脈瘤の破裂リスクの解析に挑むが、男社会の工学分野で、女性であるがゆえの悩み、数々の苦労を経験してきた・・・。そんな大島は、どうやって“どん底”を切り抜けることができたのか?

まずは、脳動脈瘤の解析に流体力学を応用して、破裂リスクをシミュレーションするという研究内容が紹介されました。

で、夢の扉ではお約束の(ワン)パターンなのですが、障壁とか挫折とか困難という要素が途中に必ずはさまります。よくあるのが、研究を評価されないとか、研究テーマを馬鹿にされるとか。大島教授の場合は、工学という男性社会の中での苦労話。

女子トイレが、男子トイレの一部をしきっただけだった、なんてのは笑い話の類ですが、↓こういう結構きついものもあったと。

夢の扉 大島まり 何を言ってるんだ、女のくせに
ナレーション: 男性社会の現実。さらに、会議である意見に対し大島が反論したときには、「何を言ってるんだ、女のくせに」

夢の扉 大島まり 結婚はできないね
ナレーション: さらに東京大学で工学博士号を取得したときのこと。この分野では女性として10年ぶりの快挙だったのだが、まわりは・・・。「30過ぎて女性で博士。もう確実に結婚はできないね」。大島の中で何かが折れた。

↓だんだん話がそれていってるような・・・

夢の扉 大島まり もうやめた方がいいのかな
ナレーション: ふと、まわりを見れば同世代の女性は家庭を持ち、幸せそう。自分は男性社会の中でいつも一人。「もう、やめた方がいいのかな・・・」

で、その後、MIT留学のエピソードが紹介されます。

留学中に網膜剥離になり手術、入院。異国の地で体を壊すという不安な状況の中、ホームステイ先で知り合ったナタリーさんは「実の娘のように」世話をして支えてくれた。そのナタリーさんからの言葉が、この回の「言葉の力スペシャル」のメインテーマであるわけです。

時系列的には、MIT留学 → ナタリーさんの言葉 → 研究者として男性社会で苦労 → 言葉を胸にがんばる、みたいな順になります。

まあこれは、私の印象に過ぎないのですが、最初の男性社会うんぬんのところって、テーマがぶれるから、いらないんじゃないかなあと。けっこう時間割いているし再現映像みたいなのもあったから印象が強すぎて。

尺があるなら、研究内容をもっと詳しく紹介して、(男性社会とかではなく)研究における苦労につなげて、それを支えたナタリーさんの言葉、っていう構成でいいんじゃないかなと。

「女性の研究者だから、女性ゆえにいろいろ苦労したんでしょ?」みたいなステレオタイプな発想が、なんだか透けてくるようで。VTR作る前の事前打ち合わせでも、そこばっかり聞いてくるような。私の憶測ですけど。

まあ、ここまではまだ良かったんですが、最後のところでこの終わり方はないでしょ、と思いました。

夢の扉 大島まり 結婚式の写真
ナレーション: かつて「結婚できない」と言われた大島まり。諦めなかった研究を通じて、運命の人と出会った。

えー!? 最後にその話もってくる?

「研究での困難 → 克服 → 研究での成功」ってのをメインにすればいいじゃん。ここで結婚の話を持ってくるか? 動脈瘤の破裂リスクシミュレーションはどこへ行った?

サブタイトルになっていた、「絶対にあきらめなかった物語」が、絶対にあきらめなかった研究の話じゃなくて、「絶対にあきらめなかった『結婚』」みたいになってんじゃん。

研究者が女性だったというだけで、すぐにこっち系の話で番組作りをしてしまう体質を見ると、どうやらTBSも男性社会のようです。

夢の扉+:あきらめない人が心に刻んだ24の言葉
夢の扉+:あきらめない人が心に刻んだ24の言葉

2015年4月25日 (土)

AviUtlで音声や字幕がずれるときは、AvidemuxとYAMB(MP4Box)で対処

DVDをmp4にするとき、普段は以下のような手順でやってます。

(1) DVD Decrypterでリッピング

(2) DVD2AVI
  ・プロジェクトファイルを作る(.d2v)
  ・音声ファイルを分離する(.wav)

(3) AviUtl
  ・d2vファイルとwavファイルを読み込む
  ・必要に応じてVobSubフィルタで字幕を焼き込む

そして、大抵はうまくいっていました。

が、今回できあがったmp4を再生してみると、音声も字幕もタイミングがずれていたんですよね。よく見てみるとd2vを読み込ませたときの総時間と、wavの長さが合っていない。

「ロード時に映像と音声の長さが0.1秒以上ずれているもは自動的にfps調整する」のチェックを入れてみたり、入力プラグインの順序を変えて(DirectShow File Reader⇔L-SMASH Works File Reader など)みてもダメでした。

もうこれは、AviUtlと相性が悪いんだということで、違う方法を探すことにしました。そして、「Avidemux」が使えることを知りました。

(1)でリッピングしたあと、VTS_01_1.VOBをAvidemuxに読み込ませると、連番になっているVTS_01_2.VOB、VTS_01_3.VOB・・・も読み込んでくれます。

  Video Output:  Mpeg4 AVC(x264)
  Audio Output:  AAC(Faac)
  Output Format: MP4 Muxer

を選択して(上記は一例。どれを選ぶかはお好みで)、Saveすればmp4ファイルができあがりました。音声もずれていませんでした。

でも、まだやることが残っています。

アスペクト比がDVDの解像度のままの720x480(=3:2)になっています。これを正しくするのと、字幕の付加です。

この2つの作業は、「Yamb」で対応できることを知りました。

・「Click to create an MP4 file with multiple audio, video, subtitle and chapters streams.」を選択

Yambに字幕ファイル(idx)を読み込ませたところ
・mp4ファイルと、idxファイルを読み込ませる

・映像トラックのPropertiesで、Pixels Aspect Ratioを指定

・字幕トラックのPropertiesで、Media Delayを指定(必要なら)

という感じです。

やり方としてはこれでうまくいくはずです。が、私の環境ではうまくいきませんでした・・・

YAMBのバージョンのせいでしょうか、字幕のMUXのところでYAMBが異常終了しちゃうんですよね。

なので、YAMBではAspect Ratioだけ変更して、字幕の付加はMP4Boxを直に動かして行うことにしました。

コマンドは↓こんな感じです。

MP4Box.exe -add "VTS_01_0.idx" "xxx.mp4"

タイミングがずれていた場合は、delay(ミリ秒で指定)で調整できます↓

MP4Box.exe -add "VTS_01_0.idx":delay=6000 "xxx.mp4"

上記は字幕のタイミングを6秒遅らせるコマンドの例です。

字幕の表示やタイミング調整に対応していないプレイヤーもあるようですが、パソコンではVLC Media Player、スマホではVLC for Androidで問題なく再生できました。

フリーソフトでデキる! DVD&ブルーレイ最新コピー2014 (100%ムックシリーズ)
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2015年4月22日 (水)

首相官邸に幽霊(Phantom)が出た

さっきからテレビのワイドショーやらニュースやらで、首相官邸にドローンが落下していたというのをやってて↓

官邸屋上に「ドローン」 微量の放射線検出 NHKニュース

どうやらそのドローンの製品名が「ファントム」というものだったそうです。

ファントムの意味は・・・

phantomの意味 - 英和辞書 - 英語辞書 - goo辞書

[名]((文))
1 幻影,幻想,映像,化身,心象,幽霊,お化け.

そういえば、↓こんな話もありましたねえ。

「幽霊が出るから嫌」!?首相公邸に入居しない安倍総理 - NAVER まとめ

そしてまた、「どろ~ん」って響きがお化けが出そうな感じで。

こりゃうまいところに気付いたね、などと自画自賛しかけていたのですが、ふと、「官邸」と「公邸」は別物であることに気付きました。まあ、近いからいいか。

「首相公邸の幽霊」の正体 (OR books)
「首相公邸の幽霊」の正体 (OR books)

2015年4月19日 (日)

「おにぎりせんべい 銀しゃり」にまつわるミステリー

お断り: 「おにぎりせんべい 銀しゃり」に関する話ではありません。私の家族に関するごく個人的な話題です。

台所にお菓子置き場の戸棚みたいなところがありまして、スーパーで買ってきたスナックとかチョコとかビスケットとかはそこに放り込んでおくような感じなんですね。

食べたいときはそこをごそごそと探せば何かしらある、というシステム。

で、私はそこをごそごそっとやってて、「おにぎりせんべい 銀しゃり」を見つけたわけです。居間に持ってきて、嫁と子供と食べます。「おにぎりせんべいに塩味があるんだねー」とか言いながら。

「どこで買ったん?」って聞くと、「私は買ってないけど」と嫁。「買い物かごに入れた?」と子供に聞いても、心当たりがないと。

え、どういうこと?と私が話を続けようとすると、「どうでもいい」という感じの嫁。

いや、いや、いや。はっきりさせてから食べようよ。

何か別のもの(似たパッケージのお菓子)を買うつもりで、これを買い物かごに入れたんじゃないかと。だから、だれも「おにぎりせんべい 銀しゃり」買ったという認識がないのではないかというのが、とりあえずの結論。

じゃあ、買ったつもりだけど無いものがあるはずだと。それが何かはっきりさせたい。昨日買い物行ったよね。買い物かごに入れた(つもりの)お菓子、覚えている?

みたいな話を私が続けると、嫁と子供にすごく面倒くさそうな顔をされました。

どうでもいいじゃん、もう食べ終わったし、って。

マスヤ 26gおにぎりせんべい銀しゃり 26g×20袋
マスヤ 26gおにぎりせんべい銀しゃり 26g×20袋

川崎中1殺人事件や亀岡事故のことを書いたら、AdSense広告の配信を停止された

ほとぼりも冷めてきたので少しだけ。

タイトルにはやや誇張があります。実名やら写真やらも載せてましたから、そこがまずかったのでしょう。ネットで普通に流通していたものだし大丈夫だろうと。見てない人の方が少ないんじゃないかという気もするくらいだし。

結果的には記事を削除することで(↓こんな感じ)、AdSenseの広告配信を再開してもらいました。

【削除】フジテレビによれば逮捕されたのは○○○○です(川崎市中一殺人事件 名前・顔写真・住所特定): 主張

こちらも生活がかかっていますので、これからもGoogle様とはお付き合いをしていきたいなと。どこまでも媚びていきます。Google様はいい人です。邪悪なところなんか少しもありません。

「ここがダメ」ってはっきり言ってくれないんですよね。漠然と書かれたポリシーをコピペした文面が繰り返し送られてくるだけで。

こちらとしては、これを削除したけどダメ、ここを伏字にしたけどダメ、って感じでだんだんと面倒になって、最後は「記事ごと削除してしまえ」となってしまうんでしょうね。

私も本文はまるごと削除したのですが、記事のURL自体は残したかった。被リンクを残したいという打算的な部分もあるし、書かれたコメントは消したくないというのもありました。そしたら、今度はコメントに書かれている内容に問題がある、という形の指摘を受けて、コメントを少しずつ修正して・・・ってな感じで、↓伏字だらけでなんとか残しました。

【削除】犯人の写真・本名晒される ○○○○、○○○、○○○○○(京都府亀岡市無免許危険運転事故): 主張

Googleとは何度もやりとりしました。

最初に来たのは↓こんな警告。

嫌がらせ: Google
では嫌がらせやいじめなどに類するコンテンツ(個人や団体に対する攻撃を推奨するコンテンツ)を収益化することを認めません。こうしたコンテンツには次のものが含まれますが、これらに限定されません。

- 特定の個人や団体を非難、攻撃、嘲笑するコンテンツ
- 個人やグループに対して身体的、精神的に苦痛を与える恐れがあるコンテンツ
- 個人やグループを貶めたり、恥をかかせたり、悪用したりするコンテンツ
- 全体的に嫌がらせを主たる目的とするコメントや投稿を含むコンテンツ

すごーく広く書かれていること、分かりますよね。これを真に受けると、朝日新聞批判も、芸能人の離婚記事も書けません。もちろん、その程度のことでGoogleはケチをつけてきたりはしませんが、どうとでも広く解釈できるポリシーを定めておいて、自由気ままに運用できるようにするためです。いえいえ、Google様は邪悪ではありません。

記事自体はごっそり削除したので、これはすぐ解決したのですが、その次はコメント欄についての指摘が来ました。

コメント スパム: Google のプログラム ポリシーに記載されているとおり、AdSenseサイト運営者様がアダルトまたは成人向けコンテンツを含むページに Google広告を掲載することは許可しておりません。コメントやフォーラムの投稿など、ユーザーがサイト上で作成するコンテンツや、不正使用されたコンテンツを監視するのは決して簡単な作業ではありませんがAdSense にご参加いただくためには、広告コードを含むページが AdSense のプログラムポリシーに準拠していることが必須条件となります。

そのあと、過度に猥褻な内容のコメントを削除すると、今度はちょっと変化があって↓

Googleでは、過度にデリケート、悲劇的な事件に関するものやユーザーを傷つける可能性のあるものをはじめ、デリケートなコンテンツの収益化を禁止しています。これには不幸な事故、自殺、自然災害、わいせつ事件の他、個人、集団、組織を誹謗中傷するコンテンツも含まれます。Googleは表現の自由を強く信じ、ウェブ全体にわたって検閲を伴わない幅広いアクセスを提供していますが、こういったコンテンツを含むサイトで表示するコンテンツターゲット広告によって、好ましいユーザー エクスペリエンスを提供できるかどうか、独自の裁量に基づき審査、判断する権限を有しています。

ざっくりとしたポリシー全体で拒否してくるものだから、あれが悪いのか?これがNGなのか?とこちらはあちこち直していき、結局は骨抜きになったものが残ることになります。それがGoogleの意図でしょうか?

氏名を削除する修正。

(同上)

住所、電話番号を削除する修正。

(同上)

加害者・加害者関係者に関する、学校名、家業・勤め先・バイト先(牛乳屋)、家族構成、部活動、生年月日、、駅名、団体名を伏字にしました。
差別的な表現(部落、キチガイ)、加害者や加害者関係者に向けられた「殺す」の表現、、報復を呼びかけるものを伏字に。

(同上)

加害者に関する、学校名、家業・勤め先、家族構成、部活、生年月日、団体名、差別的な表現(部落、キチガイ)、加害者に向けられた「殺す」などの表現、報復を呼びかけるコメントを伏字にしました。

(同上)

容疑者の顔写真や個人情報が存在するページへのリンク、差別的なハンドルネーム(「反日朝鮮人」など)を削除しました。

ここでやっと動きがありました。コメント欄の内容についてはOKが出たようです。

でも、笑っちゃったのが、「記事にAdSense広告が見当たりません」という連絡。

そら、広告配信停止されてるんだから、非表示にしとるがな。

皆さんもお気をつけください。

あと、このエントリ自体は大目に見てね Dear Google様。■

[2015年7月26日追記]
おそらく同様に広告配信停止をくらったブロガーさんが、googleのガイドラインを検索窓にコピペして、このエントリにたどり着いた模様↓
googleでは、過度にデリケート、悲劇的な事件に関するものやユーザーを傷つける可能性のあるものをはじめ、デリケートなコンテンツの収益化を禁止しています。これには不幸な事故、自殺、自然災害、わいせつ事件の他、個人、集団、組織を誹謗中傷するコンテンツも含まれます - 急上昇ワードな理由

少年事件の実名報道は許されないのか―少年法と表現の自由
少年事件の実名報道は許されないのか―少年法と表現の自由

2015年4月 5日 (日)

「現代口語演劇のために」と「S高原から」 そして、死ぬ演技について

演劇と縁のない私が平田オリザ氏のことを認識したのは↓この番組でした。

 ニッポン戦後サブカルチャー史
 第8回「セカイの変容
      ~岡崎京子・エヴァンゲリオン・ゲーム~90年代(1)」
 NHK Eテレ 2014年9月19日放送

「平田オリザ」という劇作家がいるってことくらいは知っていたんですけどね。どんな人かも、どんな演劇かも知りませんでした。「テレビでやらないもの」に触れる機会がなかなかありませんで・・・

で、番組は(これまた劇作家の)宮沢章夫氏が講師となって、1945年~2000年代のサブカルチャーを紹介するというもので、その中で平田オリザのこともとりあげたんですね。

ナレーションでの説明の部分が、比較的まとまっていて分かりやすいと思うので、書き起こしてみると

ナレーション:
劇作家 平田オリザは「『私は歯が痛い』という台詞に対して現代演劇の観客は納得しない。なぜならそれは『あぁ、そうですか』としか答えようがない主観的な命題だからだ」と語っている。作家や役者がいくら痛みを主張しても現代の観客はその痛みを共有できないというのだ。そこで代わりに提案されたのは、『彼は歯が痛いらしい』『痛いんだって』といった第三者からの客観的な台詞をつらねて感じさせることだった。

ふ~ん。

で、そのあとに、リハーサルの風景や「ソウル市民」の映像が流れたのですが↓

「ソウル市民」(ニッポン戦後サブカルチャー史)

私が「おぉ」と思ったのは、台詞が「普通に話されている」という点です。

観客のやや上方の中空を見ながら腹から声を出す、とかじゃない感じ。いかにも推敲された気のきいた台詞をどや顔で一気に放出する、とかじゃない感じ。

演劇(や映画やドラマも)ってのは、リアリティがすべてじゃないんだろうけど、リアリティを追求した作品があってもいいんじゃないってのは、常々思っていたんですが、そういうものに出会ったことがなかったので、衝撃でした。こういうのもあるんだ、って。

で、「こういう演劇があるんだって」という話を嫁さんにしたら、「ドラマみたいな感じ?」という反応。演劇に比べればドラマは普通っぽいけど、でも普通じゃないじゃん。この役者が言っている台詞どうよ?こんなこと言わないじゃん。こんな話し方しないじゃん。たまにこんな奴いるかもしれないけど、そいうのって芝居がかった痛いやつじゃん。というところは、嫁さんにはあまり伝わりませんでした。

話戻します。で、番組中でも触れられていた平田オリザの著書「現代口語演劇のために」を読んでみたんですね↓

平田オリザの仕事〈1〉現代口語演劇のために
平田オリザの仕事〈1〉現代口語演劇のために

番組でとりあげられていたのは↓このあたりでしょうか。

では次に「私は歯が痛い」と役者が言う。ところが、これを観客に納得、共感させるのは私は無理だと思う。「これは机だ」という命題と「私は歯が痛い」という命題は明らかに違う。「私は歯が痛い」という主観的命題は、どうやっても証明不可能だからだ。人はそれを聞いて言うだろう。「あぁ、そうですか」と。

で、番組では、この「あぁ、そうですか」のあたりを強調していたんですが、私が「現代口語演劇のために」を読んで、そうそう、と思ったのは、「演技について」という章の↓このあたり。

ここでいう「表現の欲求」とは、簡単にいってしまえば、役者はほうっておけば、「悲しい」という言葉を戯曲の中から発見したとたん、悲しく悲しく演技しようとする習性を持っているということだ。この、役者の「表現の欲求」については、以下のようにまとめることができるだろう。

a、人間は、悲しいときに、とりたてて「悲しさ」を表現することはしない。

でしょー。そういう表現をすべき場面ではそうするかもしれないけど、そんな場面は滅多にないでしょ。お葬式で神妙な顔をしてなきゃとか、プレゼントもらって嬉しいことを表現しなきゃってときとか。つまり「演技している場面」以外ではそんな表現はしないんですよね。私は悲しくても嬉しくても、普通の顔をしています。むしろそういう時ほど普通の表情をしています。

でも、世の中の表現は↓こうなってしまっていくんですよね。

b、もっとも愚かな役者は、その「表現の欲求」に無自覚で、例えば、これまでに観た演劇や映画やテレビの、悲しい場面を模倣しようとする。

そして、

c、次に愚かな役者は、悲しい場面を想像する。しかし、その想像も「悲しさ」という言葉の呪縛から逃れられないために、大きな限定を受けている。

で、どうやって悲しい人の表現を学べばいいの?ってなって、

d、次に、もっとも良心的で愚かな役者は、悲しみに浸る人々を観察する。

「その手があったか!」とは、なりません。

電車に乗っている人のうち、だれが悲しみの中にいるかを、どうやって見分ければいいのだろうか。結局は、自分の記憶や想像力の範囲での悲しさの表現とその類型以外のものは発見できないだろう。

対象を選択する時点でバイアスがかかってしまうということなんですね。電車でニヤニヤしている蛭子さんを観察して、「嬉しがっている人」の演技の参考にしてはいけないでしょ。

でも、こうなってくると、悲しさや嬉しさを表現するってことが、ほとんど不可能であるような気になってきます。

(筆者注: 表現の)義務から解放された役者は、では、どういった方向で演技をしていけばいいのだろうか。
「悲しさ」を表現してはならない。
しかし、「悲しさ」を表現しないということも、また一つの意味を生み出してしまう。何故なら、観客には、表現を拒否する役者の意図が見えてしまうからだ。

もう、禅問答みたいになってきました。役者はどうすればいんでしょう?

そこで、ただ唯一「もしかしたら悲しいのかもしれない」というように見えることだけが許される。

ギリギリのバランスのところに成り立つ表現ですね。でも、現実の世界ってそうですもんね。まあ、怒っていないのに、怒っているような表情をして、周りを混乱させる人もいますけど。

で、実はここまでは前ふりでした。私が本当に感心したのは、この演技論が戯曲の中で実践されているのを見たときですね。

「S高原から」という戯曲の脚本↓を読みました。

東京ノート・S高原から (平田オリザ戯曲集)
東京ノート・S高原から (平田オリザ戯曲集)

舞台はサナトリウムなんですね。だから、いつ死んでもおかしくないような重病の人もいるわけです。でも、いつ死んでもおかしくないような人が、必ずしも今にも死にそうな感じというわけではなかったりもしますよね。普通に散歩したり、どうでもいい会話をしたり。そういう、暗すぎない感じの、悲しさがあるようなないような、そんな戯曲でした。(読んだだけですが・・・)

で、このあとネタばれです。

「読もう」あるいは「見よう」(DVDとか)と思っている人は要注意。

・・・いい?

最後に登場人物の一人が死ぬんですね。いや、もしかしたらほんとは死んでいないのかもしれません、でも、死んだと捉える方が自然なような・・・

具合悪いときってウトウトしがちだったりするじゃないですか。で、ロビーの椅子に座ってウトウトしていると、話しかけている人が「起きてます?」「聞いてますよ。」みたいなやりとりが何度か展開されるわけです。

周りの人はちょっと心配したりもするんですが、それはあくまで、こんなところで寝てたら風邪引きますよ的な文脈ですね。

で、ラストのところです。

前島 ☆67 福島さん、風邪引きますよ。

西岡 ☆67 今日/

・・・

前島 なに?

西岡 なんでもない、

前島 大丈夫かな?

西岡 大丈夫でしょ、

前島 なんか、死んでいるみたい。

西岡 うーん、いい顔してるねぇ。(歩き出す)

前島 さっき、なんて言ったの?

西岡 何でもない。

前島 あ、そう、

   * 西岡、前島、上手に退場。
    福島、長椅子の上で死んだように眠る。十秒後に暗転。

ちなみに、「☆」は台詞が同時に話される、「/」は台詞が遮られて途切れるような意味の記号です。

で、このシーンの真意は、この戯曲集に収録されている、平田氏がパンフレットに載せた「ご挨拶にかえて」の文章を読むと、少し見えてきます。

ある芝居を見ていたら、舞台上で人が死んだ。もちろん本当に死んだわけではなくて、死んだというお芝居をした。私は、「それは無理だろうと思った。
(中略)
さて、では、現代演劇で死を直接的に扱うことはもう無理なのだろうか。と、そんなことを考えながら作ったのが、この『S高原から』という作品である。はたして、この作品の中で死がどのように扱われるかは、まぁもちろん見てのお楽しみなのだが、私としては、おそらくこの方法が、現代において唯一、演劇が死へと近づいていける方向なのではないかとさえ思っている。

ね?

「私は歯が痛い」くらいだったら、もしかしたら、大して違和感を覚えさせることなく演じられるかもしれない。例え、納得、共感させられないとしても。

でも、「私は死んでいます」の演技は相当難しいんじゃないかと。平田氏の言葉を借りれば「無理」だと。

だからこの演劇論が活きてくる。

そこで、ただ唯一「もしかしたら悲しいのかもしれない」というように見えることだけが許される。

「もしかしたら死んでいるのかもしれない」というように見えること、が大事であると。

死んでいないように見える(動くとか、しゃべるとか)のもいけないし、かといって、死んでいるように見せようとする(ガクッと事切れるとか、白目をむくとか)のもいけない。

でも、それによって役者さんは不可能な演技をさせられることから開放されるというわけなんですね。

・・・なんて、訳知り顔で書く私は、平田オリザ氏の演劇を一度も見たことないという・・・

平田オリザの仕事〈1〉現代口語演劇のために
平田オリザの仕事〈1〉現代口語演劇のために

平田オリザの現場 17 S高原から [DVD]
平田オリザの現場 17 S高原から [DVD]

GALAXY Blade Edgeを安倍総理には使わないでね

2015年のエイプリルフールに、Samsungが↓こんなネタを公開していました。

モバイル版MS-DOSや鋭すぎるGALAXY Edgeなど、海外エイプリルフールネタをご紹介 - ITmedia ニュース

韓国Samsung Electronicsは、「GALAXY Note Edge」や「GALAXY S6 Edge」の画面の側面をカーブさせるコンセプトの延長で、左側面を調理用ナイフとして使えるようにシャープにしたスマートフォン「GALAXY Blade Edge」を発表した。

↓こんな細かい設定まであったようです。

キッチンで使うので当然防水仕様で、ナイフの柄の部分を折りたたんで収納すれば普通のスマートフォンとしても使える。機能は「GALAXY S6」と同等。凶器として使われないよう、人間の血を検知するセンサーがついており、検知すると警察に通報する機能も搭載する。

で、このジョークってのが全然笑えなかったんですよね。

というのも、ちょっと前に↓このニュースを見ていたから。

痛いニュース(ノ∀`) : 【動画】 韓国保守団体、安倍首相に見立てた人形の首を切るパフォーマンス - ライブドアブログ

YouTubeに動画があります↓

こういうのはきちんと警察が取り締まらないと、国としての品性を疑われるんじゃないかと。公序良俗に反しているとかなんとか、十分に理由はつけられるだろうに。

韓国経済がけっぷち〜サムスンとともに自滅する韓国経済〜
韓国経済がけっぷち〜サムスンとともに自滅する韓国経済〜

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