オーディオブックへの要望(「日本オーディオブック協議会」設立のニュースにちなんで)
私がオーディオブックを初めて買ったのは約20年前、新潮カセットブックというシリーズで芥川龍之介の「杜子春、蜘蛛の糸」が収録されたものでした。家庭教師のアルバイトの通勤(自転車で30分)時に、ウォークマンで聴くために購入したように記憶しています。
そう、「カセットテープ」だったんですよね。CDというメディアはすでに一般的だったんですが、CDウォークマンじゃ胸ポケットに入らないですからね。それにお金が有り余っている人以外は、レンタルショップで音楽CDを借りて、カセットテープにダビングするというスタイルが普通でしたし。
つまり(カセットテープの)ウォークマンで聞くために、カセットテープのオーディオブックを買ったというわけです。買ったのはそれが最初で最後でした。1500~2000円くらいの価格だったと思うのですが、ちょいちょい買うにはちょっと高いかなと。文庫本だったら3,400円で買えましたからね。
という前置きのあと、↓このニュース(2015年4月6日)です。
電子書籍の次の柱に――大手出版社など16社、「日本オーディオブック協議会」設立 - ITmedia eBook USER
小学館・講談社・新潮社・KADOKAWA・オトバンクなど16社は4月6日、「日本オーディオブック協議会」の設立を発表した。
今さら?って気も一瞬しますが、
国内のオーディオブック市場は現在、パッケージ(CD-ROMなどの形で提供されるもの)が約30億円、ダウンロードなど配信型のものが約20億円で、合計すると約50億円の市場といったところだという。上田氏によると米国では1600億円規模、グローバルでみると書籍市場の10%だとして、国内でも800~900億円程度までスケールできると期待を寄せる。
とのこと。もっと市場が大きくてもいいはずなのに、イマイチ盛り上がっていない。てこ入れせねば、ということみたいです。
なんとなく市場として地味ですもんね。ごく一部の人しか利用していないというイメージ。
視覚障害(老眼含む)や失読症など、このようなメディア形態に頼らざるを得ない人以外への浸透も狙っていかなければいけないと思うんですよね。つまり、普通にテキスト形態の本は読める、でもそれ以上のものをオーディオブックから得ることができる、という形に。
前述のリンク先に↓こんなグラフがあったのですが、
年齢では30代~40代、職業ではビジネスパーソンというのが主な利用者層です。「読書に難があるから音声で」という仮説は成り立たないですよね。というのを踏まえると・・・↓
【速聴という視点で】
冒頭にオーディオブックは学生時代にカセットを買ったのが最後だと書きましたが、実はわたくし今でもオーディオブックの愛好者だったりします。買ってはいないけど、自治体の図書館でCDをよく借りています。そして、私が見出している魅力ポイントは、速聴だったりします。
読書慣れしている人にとっては、朗読のスピードってのはまどろっこしいときがあります。しっかりと発音されている朗読の音声は、多少スピードを上げても難なく聞き取れます。
慣れてくると、2倍速が普通に聞こえてきます。ちょっと大袈裟に言えば、今聞いているのって、標準速だったっけ? 2倍速だったっけ?みたいな感じ。集中していれば、3倍速でもいけます。これくらいのスピードになると、黙読にもひけをとらなくなってきます。
つまり、本を読めないとか、本を開けない環境(満員電車とか歩行中とか)でなくとも、十分にオーディオブックの価値が出てくるんですね。
この辺を狙ってみてはどうかと思うんですよ。時間のないあなたへオーディオブックでの知識吸収というスタイルを提案、みたいな。特殊な機器はいらないですからね。音声データの形にならば、Androidなら「VLC for Android」や「Dice Player」のようなスマホのアプリで好きなように速度は変えられますので。
【価格】
短編 100円、長編 300~500円くらいが限界かなあ。叩き売りしすぎるとテキスト媒体(紙や電子書籍)の収益を食ってしまわないかという心配もあるかもしれませんが、そこは問題ないんじゃないかと思っています。音声単独では、テキストの代替にはならないです。
同音異義語の問題もあるし、テキストとして所有したい(特に物理書籍)というのもあるし、一覧性や検索性を考えれば、私なんかは、本当に気に入った本は、紙、電子テキスト、音声の3つの形式で所有したいと思います。「電子書籍を購入した人は+100円で音声を付けられます」なんてのがあればすごく嬉しい。
【ジャンル】
先述の記事に、
現状、オーディオブックとして存在するのは1万5000点ほどだが、3年後には4倍の6万点に、またジャンルも文芸作品が最も多く(全体の約4割)なると見込んでいるという。ちなみに米国のオーディオブックは7割がフィクションだというのも文芸作品の割合が増えるとする根拠の1つだ。
とあって、今後文芸作品が増えるだろうとの見込み。
長い目でみれば文芸作品の方が需要があると思います。文芸作品、その中でも古典ですね。ほとんどのビジネス書の賞味期限って10年もないんじゃないかと思います。「羅生門」は私の親の世代も読んだだろうし、私の世代も読んだし、私の子供の世代も読むことになるでしょう。源氏物語ほどの古典になれば、1000年以上い渡る世代の愛読者がいるわけです。課金システムを用意しておくだけで、細く長く、収益が期待できます。
【余計なもの】
私が今まで聴いたCDで、ちょっとしたBGMが付いているものがあったんですよ。ずっと流れているわけではないのですが、最初と最後のところにちょっと音楽が流れる。「文豪の怪談」みたいなシリーズだったので、おどろおどろしい感じの。・・・いらないなあ。
あと、賛否が分かれるかもしれませんが、感情をいっぱいに込めて朗読するよりも、淡々と読んでくれたほうが、私としては嬉しい。テキストの入力インタフェースとして音声を使っているだけであって、心情や感情の解釈はこちらでするから、というスタンスでもいいんじゃないかと。
それから、有名人(俳優とか)の起用は不要かなと。私の手元にあるファイルだと、森繁久彌、岸田今日子、風間杜夫、橋爪功、林隆三、蟹江敬三、江守徹 などなど。どんだけ豪華なんだ。
今までは、カセットやCDとしてパッケージ化するからには、「売り」を作って、数売ってというところがあったかもしれませんが、これからは損益分岐点をどこまで下げられるかに力を入れてほしいです。
無名でも、声の仕事をしていて、きちんと読める人を効率よく起用してほしい。数ヶ月に渡るようなある程度のまとまった仕事単位で依頼すれば、作品あたりの単価は下げられるはずです。
というわけで、とにかく安価に量産できる体制を整えて、ほとんどのタイトルは音声でも入手可、という状況になってくれればと思います。
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