山手線の疑似家族
山手線は寝ている人が多い。
と、いうと若干語弊があります。早朝の時間帯でいうと、小田急のほうがよっぽど寝ている人が多いです。郊外からの長距距離の通勤・通学者が多いのに加えて、終点の新宿まで行くなら安心して眠っていられるからでしょう。小田急で寝ている人は、電車内での睡眠を生活サイクルに組み込んでいる、言うなればプロの眠り屋です。
山手線でよく見かけるのは、寝るつもりというわけではないが、眠りに落ちてしまった人です。手に持っているスマホが落ちそうだったり、実際に落したりしているのを見ると、その違いが分かります。典型的なのは泥酔者だったりします。(関連記事:吐瀉物の山手線)
私は以前、山手線の座席で眠りこけている若い男性の前に、財布とスマホと鍵が散乱しているのを見たことがあります。何がどうなったら、このように決して落としてはいけないものばかりをばらまくことになるのでしょうか。彼は夢の中では、すでに家に着いていたのでしょうか。
昨日見かけた若い女性については、お酒を飲んでいるのかどうかは分かりませんでしたが、プロの眠り屋でないことは確実でした。私が彼女の前に立ったとき、手に持っているスマホが落ちそうだったんですよね。しばらくすると「ガタン」という大きな音がしたんです。どうやらスマホを床に落としたらしい。でも、本人はまだ寝ています。左に座っていた年配の男性が、あたりの床を見まわして、女性の足元に落ちているスマホを拾ってあげて、彼女の膝をトントンと叩いて起こし、スマホを渡しました。若い女性はお礼も言わずに受け取るとすぐに、右側の年配の女性の肩にもたれかかって、また眠り始めました。
えー? スマホを拾ってくれた男性にお礼も言わず、しかも反対側に座っている年配の女性の肩にがっつり頭をのせて眠り始める。眠いとはいえ、なんという態度!
何かがあるに違いない。人間は解釈をし、納得をしたがる動物です。謎は簡単に解けました。親子です。真ん中に娘が座って、左にお父さん、右にお母さん、と並んで座っていた。親父がスマホを拾ってくれたとして、お礼など言わない娘は世の中にたくさんいそうです。そして、お母さんの肩を借りて眠り込む。なるほど、点と点がつながり線になりました。そうです、山手線という名の線にね。
私はその後、ミステリ小説を読み終わったような晴れやかな気分で、吊革につかまり電車に揺られていました。
次の駅で年配の女性が降りました。その次の駅で年配の男性が降りました。若い女性はまだ寝ています。 ・・・他人でした!
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